【グリースとは】
グリースとは、潤滑油中に増ちょう剤を分散させて半固体状又は固体状にした潤滑剤です。更に特殊な性能を付与するには、添加剤を配合します。
【グリースの構造と特性】
グリースの構造は、増ちょう剤である石けん繊維(網目構造)の隙間に油分が毛管力によって保持され形成されます。例えて言えば「スポンジに水を含ませた状態」を想像すると理解し易いでしょう。水が潤滑油でスポンジが増ちょう剤に当たります。
この様にグリースは、基本構造の2成分が各々独立性を持ちながら一体になり(化合でもなく、また単なる混合とも異なる)、液体潤滑油やペトロラタム・ワックス製品には見られない独自の物理化学的性質があります。その主な特性は、流動性、油分離及び熱的性質です。
【流動性】グリースは潤滑油とは異なり、半固体状である為、ある程度以上の応力が加わると流動する(非ニュートン流体)性質があります。これは、グリース中に石けん繊維が分散している事に起因しています。
【油分離】グリース潤滑は、適当に油分がしみ出す(分離する)ことが必要ですが、分離が早すぎても油分が無くなりグリースは硬化して寿命となります。残りの油分が40〜60%以下になると油はそれ以上分離しなくなると言われます。
【グリース潤滑と油潤滑との違い】
グリース潤滑は、半固体である為に油潤滑では得られない多くの実用上の利点がある反面、油潤滑より劣る点も少なくありません。
両者の機能上の比較は、以下の表に示します。
グリース潤滑と油潤滑の比較
グリース潤滑 | 油潤滑 | |
---|---|---|
漏洩・飛散 | 少ない | 多い |
密封装置 | 容易 | 厳密・複雑 |
密封性・防塵性 | 良好 | 不良 |
耐衝撃荷重性 | 大きい | 小さい |
冷却効果 | 小 | 大 |
給油間隔 | 長い | 短い |
給油方法・装置 | 複雑 | 容易 |
保守管理 | 容易 | 面倒(特に油漏れ) |
ごみのろ過 | 困難 | 容易 |
潤滑剤の交換 | やや繁雑 | 容易 |
グリース潤滑は、利点を生かし次の様な条件の潤滑箇所に用いられます。
- ◎ 油による汚染を避ける必要のある装置
- ◎ 断続運転をする装置
- ◎ 衝撃荷重を受ける装置
- ◎ ごみ、水分、腐食性ガス等の浸入し易い装置
- ◎ 給油が困難な箇所
- ◎ 軸受等の隙間が大きい場所
【ちょう度とは】
ちょう度とは、グリースの硬さを示す値であり、使用中のグリースの流動性を表す目安となります。増ちょう剤によって硬さを調節でき硬さは用途に応じて選びます。
JIS等では以下の表のようにちょう度を分類されています。
ちょう度分類表
JIS ちょう度番号 | NLGI ちょう度番号 |
ちょう度 (25℃) |
外観・硬さ | |
---|---|---|---|---|
000号 | 000 | 445〜475 | 半流動状 | |
00号 | 00 | 400〜430 | 半流動状 | |
0号 | 0 | 355〜385 | 半流動状又は軟質 | |
1号 | 1 | 310〜340 | 軟質 | |
2号 | 2 | 265〜295 | 普通 | |
3号 | 3 | 220〜250 | 普通 | |
4号 | 4 | 175〜205 | やや硬質 | |
5号 | 5 | 130〜160 | 硬質 | |
6号 | 6 | 85〜115 | 固体 |
ちょう度測定方法
ちょう度は、規定の容器にグリースを入れ、表面を平らにしたグリースの上に規定円錐を落とし、5秒間に沈んだ深さ(o)を10倍した数値で表します。